【前回までのあらすじ】
休暇を言い渡された俺。
何をすれば良いのか分からず、挙句の果てに「旅に出るんだ!」と、
訳の分からない回答を得つつ、準備を始める。
相棒の調子を気にしながらも、出発するのであった…
良し。
調子は上々だ。
一般道から、高速に載る。
時刻は、午後12時を過ぎたところだ。
順調に行けば、6時間後には目的地に着く。
距離=速度×時間。
知ってたよ、この式は!
計算してるし、「安全運転」で走行した結果、だからね
かつ、万が一のトラブルがあった際の事も、折り込み済み。
それが予定の到着時間!
そして、俺の運転技術と相棒の性能。
これさえあれば、何も問題はないはずだ。
高速に入ると共に、アクセルを吹かす。
身体にかかるGを、シートが受け止める。
心地良い感覚だ。
なお、二代目にはナビはない。
オーディオ関係はラジオ、CDのみ。
長距離走行の快適性に関しては問題があるかも知れない(何故この装備か、はその2を参照)が、
無駄がない分、純粋に旅を楽しめるというもの。
何もないことを楽しむ!
これだけで良かった。
数時間の走行後、休憩のためにあるパーキングエリアに入る。
自販機にコインを投入し、コーヒーを飲む。
「…」
何とも言えない温かさが、身体の隅々に沁みる。
カップを片手に、ふと、インフォメーションを見る。
「…の地方は大雪の可能性があるため、十分な注意を…」
と、流れていた。
あ、僕がこれから行くところじゃないですか
正に、向かっているじゃないですか
で、可能性の話?
雪道は走ったことあるし、その程度の感覚でいいんでしょ
と、俺はさして気にも留めなかった。
コーヒーを飲み干し、ごみ箱にカップを捨て、
クルマに戻った時の事だった。
「気に留めろ!」
と、相棒がつぶやいた。
え?
俺はこの時、相棒のつぶやきに関して、
きちんと考えなかったのだ!
半ば、スルー!
俺の運転技術(自称国際〇級ライセンス所持)と、
お前の性能。
これだけで、十分なはずだ。
どんなところであっても。
水の中じゃないでしょ?
何を憂う必要があるんだ、と、逆に相棒に問う。
相棒は、何も答えなかった。
しかし、俺はこの忠告について、もっと良く考えるべきだったのだ…
そしてそれは、後になって解る事となる。
対して気にも留めなかった俺は再び発進、目的地へと向かう。順調だ。
お気に入りのラジオチャンネルも電波が入らなくなるが、
適当にチューニングする。
この頃、雪がチラチラと舞い始めていた。
更に数時間クルマを走らせた後、目的地まで近づいた所で高速を降りる。
良し、時間通りだ。
一般道に出ると、辺りは薄暗くなる中、粉雪がやや強くなり始めていた。
道端の所々が、薄っすらと雪化粧している。
そんな景色に風情を感じながら、宿に向かう。
そして、到着。
駐車場に誘導される際に、ちょっと下り坂になっている道を通る。
そして、指定された場所に駐車する。
粉雪が舞う中、クルマを降りてチェックインに向かう。
普段とは違う冷気に触れながらも、俺はどこか新鮮さを感じていた。
時刻は、午後6時を過ぎたところだった。
しかし、この時に、俺はもっと注意をしておくべきだったのだ。
「ちょっと下り坂になっている道」の事を…!
(続く)
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