どうも、ぱっちょです。
いつもながら、当ブログにお越しいただきありがとうございます。
さて、旅物語から始めたブログ。皆様からの励みもあり、おかげさまで、今回で物語は19話目となりました。
ここまで長くなるとは当人も思っておりませんでした…今後も楽しく、お付き合いいただけましたら幸いです。
では…
【前回までのあらすじ】
・旅に出てみたら、帰りは雪になっていた。何もかもが、雪を中心とした世界となっているのだ。
(詳細は、とある旅物語18までを参照)
J●Fからのレスキューが到着した。
後は、Fさんの作業が終わるのを待つ。
結局は後輪にタイヤチェーンを履かせるだけなのだが、この環境と言い、状況と言い、
これはもうプロじゃないと無理だ。
黙々と作業を行うFさんには申し訳ないが、俺は車内へと避難する。
フロントガラス越しに外を見る。
…何度見ても、猛吹雪は変わらない。
ここは、雪の真っただ中だ…
ん?
ちょっと待てよ。
こんなような題名の映画、なかったっけ?
雪の中心で世界を叫ぶ
ちょっと違うな。
世界の中心で雪を叫ぶ
そんなようなやつだっけ。それでも、違っている気はするが…
俺はその映画を観たことはないため、内容に触れることは出来ないが、
間違いなく言えることは、今のような場面の話ではないという事だ。
もっとも、これの場合は雪の中心から世界を叫ぶ、
もしくは世界の中心、と仮定した現在の場所から雪を叫ぶ、というものとなり、
題名自体が破綻しており、内容などもはやその体を成さない。
ので、主語は世界でも雪でも、どっちでも良いんじゃないかしら。
しかし、叫ぶという行為。
これだけを実行に移しても構わないのだ。
意味不明な事をしている自分、という意味が解っているため、何かの経験値にはなるぞ。
今後、それがいつ役に立つのかは分からないけれど。
だが、その場合、誰かに現場を見られるリスクがある。
そうなると、後世まで
雪の中心で「世界!」って叫んでる人がいた
あの辺に…
とか、そこかしこで語り継がれるのを覚悟しなければならない。
このような形で、伝説の人物になる事は出来るだろう。
そう考えると、
意外と簡単なんじゃないの、伝説になるのって
上司への報告のため、俺はここで、伝説の人物になっておくことも検討することにした。
待つこと数分。
スウーッ、とジャッキが下がる音と同時に、
浮いていた後輪が地面に着地する。
これは…
Fさんが運転席に駆け寄り、
「終わりました!少し走行してもらえますか、しっかりチェーンが止まっているかを確認します」
と。
「ありがとうございます」と、俺。
アクセルを踏み込もうとするが、先程のツルツル地獄が鮮明に蘇る。
踏み込もうとする足が、止まる。
…って、何を今更ビビってんだい。
小さく深呼吸して、仕切り直す。
アクセルを少しずつ吹かす。
ゴリョゴリョゴリョ
雪を踏む感触は変わらないが、前進している。
後輪がブレる事もない、キチンと雪に喰らいついて、前進している!
更にアクセルを入れる。
思い通りに、加速する。
思い通りに相棒が動く。
Fさんの心意気に、
相棒の復活。
心の内に熱きものが灯ってきて、胸がシビれる。
やったーーーー!!
相棒は復活を果たした。
その走り回る様子を観ながら、Fさんもその辺を走りにくそうにしながらも走ってくれた。
相棒の時計を確認する。
時刻は、15時30分へと向かっている。
雪一面、辺りは真っ白な、広大な駐車場。
その中程に停車し、一旦相棒から下りる。
Fさんが、一生懸命に駆け寄って来てくれる。
そんなFさんに向けて、
「せ」
「か」
「い」
「いぃぃぃぃー」
………
……
…
雪の中心で世界を叫んだぞ。15時28分くらいの出来事だった。
俺のこの行動は、Fさんには全く意味不明だったであろうが、躊躇せずに笑顔で向かってきてくれた。
迅速丁寧。サービス心旺盛。
Fさん、あなたは間違いなく最高のJA●隊員です。
(ありがとうございました!)
「では、次の現場に向かいます。この先もお気をつけて!」
どこまでも爽やかなFさんは、そうして次の救助に向けて発って行った。
Fさんのクルマを見送り、俺もこの場から去ろうとした時だった。
吹雪が弱まってきている…?
猛烈な風は段々と勢いを弱め、視界は良好になってきている。
おお、これはもう、直ぐに出発しろってことだよ。
天が、そういっテンだよ。
だが、その前に…
お気に入りのキャメラにて、そこら辺を走り回って、そこら辺の景色を適当に撮る。
何でもいいから撮りまくって、後で見ればいいしね。
おっと、足元。注意しないとね。雪で、側溝とか埋まってるからね。
適当に写真を撮り終えた俺は、復活した相棒に乗り込み、先へ進むこととした。
ひとまず、次の目的地は市街地だな…。
この時、少し用を足していこうと思ったが、
必要な時にトイレは近くにはない
というマーフィーの法則により、トイレは少し離れた場所にあったと記憶していた。
そこまで行くのは、また大変だし、
相棒も走るし、
市街地までは問題ないでしょ
と、そのまま出発した。
だが、学習能力のない俺は、再び知ることになる。
この、「少し用を足していこうと思った」事をしなかった、重要性を…!
(続く)