【前回までのあらすじ】
北に旅に出た俺。
かの地では、吹雪による困難が待ち受けていた。
そこで、様々な助けを受けながら、
また新たな困難に出遭うこととなる…
さて。
大通りまで、来たぞ。
大渋滞に大きな変化は見られない。
確か歩道があったはずだが、
その境目の縁石は、雪に埋もれて分からない。
無数のクルマが、
その縁石を越えて、縦横無尽に拡がっている。
そして、
相棒の待つ駐車場は、ここからでは計り知れない場所にある。
どこから、必殺「最後の力の一歩手前」を使うべきか…
その時、
何かに躓いた。
ズテッ
と、前のめりに崩れる。
…
お、これ、縁石じゃないの?
境目は分かった。
後は、これに沿って進んでいけば良いのだが、
何しろ大渋滞のクルマの数々!
車道や歩道など、もう関係ない状況なのだ!
ひとは、歩道
クルマは、車道
などという、そんな道徳など今のこの場には存在していないのだ!
ここで、事故に遭っても雪に埋もれるだけさ。
そして、この吹雪。
とにかく、息が吐けない!
…
相棒の位置はおおよそになるが、
俺はここで「最後の力の一歩手前」を使った。
集中する。
水の中には、潜ったことはあるかい?
そこで、息したことある?
吸ったら大変だよ、ガボガボ、ってなるよ!
嘘だと思うなら、試してみるといい。
そして、
息を吐くのは、それに比べれば出来るよ。
潜る前に、吸ってたのを出すだけだから!
嘘だと思うなら、試してみるといい。
で、
今は逆になっていて
要するに潜水で、
吸うことが漏れなく可能な状況でしょ。
ガボガボ状態なだけだ。
今、やる意味がある?
…と考えてしまう、現実に戻る前までが勝負なのだ!
そして、
っていうか、やっぱり苦しいんですぅ
どこか、穴があったら入りたい
スーハーと、呼吸させてくれ
誰かー!
と、叫ぶ直前までが、ここでの必殺「最後の力の一歩手前」となる。
このおかげで、かなり歩行は捗った。
途中、何台か渋滞のクルマにぶち当たった(轢かれたという説もある)が、
必殺技の前には、そのようなことは関係なかったのだ!
どのくらい、この時間を彷徨ったか。
ヘロヘロになって、相棒の元にたどり着いた。
「…」
相棒は、その場に陣取って居る。
すっかり雪にまみれ、
ここから出発する前にまでに温まっていた、ボンネットから融けた雪が、
バンパーやタイヤハウスに、それが氷柱となって残っていた。
これが、マイナスの世界か…
タイヤチェーンの入ったケースをそこら辺に置く。
こいつを履かせるためには、まず相棒を少し動かすところからだ。
相棒のロックをアナログ作戦により開け、
例によってドシャっと入ってくる雪と共に、構わずシートに座る。
…
外気とは違う、相棒の冷え切った車内の冷気。
寒いのは変わらないが、温かく感じるのはなぜなのか…
一旦落ち着いた後、
エンジンをかける。
キュ…
カスッ
ん?
もう一度、キーを回す。
キュカス
ん?
なんだこれは。
このテンポの早さは何だ。
もう一度、と思うのとは裏腹、
俺の身体がエンジンをかけるのを止める。
何故、エンジンがかからないのか。
考えられる原因が、幾つかあるのだ。
こうした場合、無暗にセルを回してしまうと、まずバッテリーに影響が出る。
セルを回すために、電圧を使うからだ。
そうなると、バッテリー上がりと同等。
そのため、色々確認する必要があるのだ。
俺が真っ先に思ったのは、
先のスタンドで相棒に放ってしまった
「あの余計な一言」
それだ。
…
そんなことあるんかい、とは思いつつも、
この状況
このタイミング