【前回までのあらすじ】
思いがけない休暇により、北の地へと旅に出た俺。
気楽に一泊で、と気分転換のつもりが、十年に一度という豪雪に遭い気楽ではない状況へと変わる。
帰宅するためにはあらゆる試練が待ち受けていたが、その土地の人々の助力もあり、
少しずつ進みながら、やがて好感度抜群のお兄チャンがいる宿泊所へと辿り着く。
帰宅ルートが二種類ある中、山側からと決める。眠りにつくと、すぐに出発の朝がやってきた。
そして…
お兄チャンに見送られ、相棒と共に出発する。
時刻は午前9時だった。
気温が低いため、道路はアイスバーン状態になっていたが、タイヤチェーンのおかげで走行は可能だ。
そして、まず最初にやることは…
相棒のエネルギー補給だな。
お兄チャンに、近隣のガソリンスタンドの位置を訊いておいたため、迷うことなくすんなりと到着する。
相棒に燃料を投入。
「…」
相棒は無言だ。
…寝てんのかな?
相棒を満タンにしたのち、ここで更にもうひと準備する。
携行缶という、ガソリンを10ℓ程度入れておくことが出来る非常用の専用缶があるのだ。
そこに、ガソリンを補充。
なぜ、こんなことをしているのかって?
それはですね、問題が起こる時に限って、相棒が腹ペコになる問題も起こる確率が高いからですよ!
「解決困難な問題の同時攻撃」を受けると、それはそれは大変ですからねぇ
備えあれば、憂いなしってところですよ。
まあ、今まで備えていなかった俺にもちろん問題があるが、
備えがあったところで、俺の場合はそれすらも無駄となるような問題が起こる可能性があるが…
ちなみに、予備のガソリンを車以外で持ち運ぶには、
こうした専用の携行缶というものが必要となる。
これは、消防法で決められていることなのだ。
時々、灯油を入れるポリタンクにガソリンを入れようとする方もいるが、
それは絶対にやってはならない。
下手をすると、ポリタンクごと爆発(燃えるのではなく爆発)するのだ。
まあ、現代では客に頼まれてもスタンドのスタッフが入れないようになっているので、あまり心配はないと思うが…
というわけで、油についての豆知識でした。
10ℓ程度予備があれば、例えどこかでガス欠になったとしても、それなりに走れる。
相棒の燃費は他者と比べると平均より悪いが、それでも焼け石に水、ということでもないだろう。
完全に止まってしまう、ということさえなければ良いのだ。
俺はスタンドのW・Cで用を足した。
同じ轍は踏まんようにせんとな。
そしていよいよ、帰宅に向けての出発となる。
高速への入り口を、スタンドで閲覧可能な地図より確認する。
チェーンを付けた状態では、おそらく時速60㌔程度でしか走れないであろう。
安全に、というのも当然だが、相棒の足回りにガタガタと衝撃が来るため、今後の相棒のコンディションに
関わるというのも理由の一つだ。
テレビから情報を得る。
本日は晴れ。現在のところ、交通に大きな乱れはないとのことだ。
そして、雪雲についての情報。
山側から徐々に東に移ってきているとのこと。
昨日、PCで調べていた情報と、今のところ大きな違いはないようだ。
と、いうことで、さっさと行こう。
スタンドから出て雪がまだ残る一般道をしばらく走り、高速に載る。
…
高速に載ったんですよ。
…
だが、もうこの時点で想像と違った。
車線に、全く雪がない。
なにこれ。
いや、ちょっと待てよ。
コイツは、きっと罠だ。
雪はないが、アイスバーンになってるパターンだろ、コレは。
俺を騙そうとしてやがるな、だが、そんな手にのりますかい!
…
追い越し車線を、どんどん他のクルマがカッ飛ばしていく。
俺は、時速60㌔走行で走行車線を走っている。
高速道路を。
…
これって、もう雪が融けてるんじゃない?
アイスバーンにもなってないんじゃない?
そうじゃないと、他のクルマがあんなスピード出せるわけないよ。
これはまずいぞ。
普通に走れる状態になっているとすれば、トロトロと走行している俺!
俺が他車の迷惑になっている!!
どうしようか…
そこら辺のサービスエリアに入って、チェーン外すか?
いや、ちょっと待て。
今の天候に騙されるな。
雪雲がこっちに向かってきているんだ。
それを突破するために、この作戦で来たのだ。
だが、「今」は、どう考えても他のクルマに迷惑をかけているのは必至。
チェーンを履いている車など皆無だ。
「…」
一度、高速から降りることにした。
一般道は、まだそれなりに雪が残っており、チェーン走行していないと危ない状況だ。
多少、目的地(我が家)に着くまでの時間にずれが生じるが、ここはこの場の状況に溶け込んで
進んでいった方が良い、という判断に至る。
一般道に降りる。
時刻は、午前10時を回ったところだ。それなりに道は混雑している。
そして、ここで気をつけねばならないことは、「山側ルートを見失わないこと」だ。
方向に気を付けていないと、
ワタシはドコ?
ココはダレ?
という、パニックを通り越した状態になってしまう。
ましてや、相棒にはカーナビがないという致命的な問題があるのだ。
なので、やるべきことは一つ。
暫く相棒と共に、他のクルマの流れに乗って走る。
道沿いのそこら辺には、ぽつぽつと店がある。
…あれだ。
オレンジ色した看板の、とあるカー用品店。
そこにINNする。
そして、カーナビ売り場に向かう。
「…」
ちょっとお店の方には申し訳ないのだが、カーナビを購入するのではなく、
展示品のカーナビを触らせてもらって、
自分の位置から、山側の高速へ向かうルート
を、調べさせてもらいました(;’∀’)
いずれは購入を検討していますから、展示品触るぐらいは大丈夫ですよね!
という、全く身勝手な理屈によるものだが、
今は情報が分かれば良いのだ。
調べたルートだって、記憶するのがスゲー大変なんだぜ?
と、店員様から何か言われたときに話題をすり替えるような話題を用意しておきながら、カーナビを利用させてもらった。
「…」
ルートを頭に叩き込む。
ここから高速入り口に入り、
高速に載り、
そして雪雲&吹雪攻撃が来るまでの時間は1時間43分27秒後だ。
はい、テキトーに言ってますよ、コレ。
説得力持たせるためにネ!
だが、きちんと計算した結果でもあるのだ。
全てが適当ではない。
と、いうことで早めに昼食を摂る事を計画し、
吹雪攻撃に備えることにした。
相棒を走らせること数分、
大きな駐車場のあるファミリーレストランが道沿いにあった。
迷うことなくそこに入る。
時刻は、午前10時30分を回ったところだ。
吹雪攻撃がやってくるのにはまだ時間があるとはいえ、早めに行動していても問題はない。
要するに、こちらから早く突撃してしまえば、早く事が済むのだ!
地の利とか、この辺じゃあ俺に関係ないしね
敵を知り、己を知れば百戦危うからず、ってやつよ。
大分、意味が違うが…
そんなことで、やや軽めの食事を済ませる。
…もしかして、これはブランチってやつ?
少しだけ、シティーボーイ(←死語ですという説あり注)になった気がした。
その後、さっさと会計を済ませ、とっとと相棒に乗り込み、発進。
先程、オレンジ色したカー用品店でチラ見したカーナビの情報によれば、間もなく
高速入り口があるはずだ。
お気に入りのラジヲもこの辺りでは入らないということをやっと学習したため、外の雑音のみ
聞こえる中、しばらく走る。
やがて、緑色の標識が見えてくる。高速入り口を示す標識だ。
標識の示す進路通りに進み、スムーズに高速へと再び載る。
この辺りも、雪はない。
相棒の時計を確認すると、午前11時30分を示していた。
そして、この後待ち受けるものは…
(続く)
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