…
【前回までのあらすじ】
雪降る地方へと旅に立った俺。
様々な事があり、ある宿へと辿り着く。
そこで、パーキングの番人・お兄チャンと出逢う。
帰路をどうするかについて考えている中で、お兄チャンと話をする。
帰りのルート、
海側か山側かを決める。
残り15分で、決めた。
決定打となったのは、
これ以上、現段階では情報収集が出来ない
この頃、細かい部分の地形などは、PCで調べても分からない時代であった。
情報と違うじゃなーい
とか、後で文句を言っても何もならないのは、現代と変わりないであろう。
なので、後は自分の直感。
何があっても、自己責任ってものよ。
からである。
そして、聴いた曲、飛んで行ってはいないがイスタンブール
だった
これは理由でも何もないが、以外にスッキリとしてしまった。
そして、翌朝。
部屋の小窓の、カーテンを開く。
空を見る。
良く晴れている
様に、見える。
街を見る。
だが、この窓からは町の景観が良く分らない。
カーテンを開けた時に感じた、窓越しに伝わってくる冷気は強烈だ。
昨日のように、地面はアイスバーン状態であることが直ぐに分かる。
こんな冷気を、少しでも遮断するカーテンって凄いですな。
流石は宿泊所だ。
サッ、とそれなりに身支度をして、モーニングへと向かう。
かなり美味しかった。
しかも、モーニング無料という事実を、チェックアウトの際に知ることとなる。
(すごいですよ、おすすめですよ、この宿は!)
そしてモーニングの際に、ニュースを見ながら情報を得る。
「雪雲の動きは、内陸部にありこれから太平洋側へと…」
ふむ。
昨夜決めたルートの最終確認を、最新情報で確認した。
俺が決めたのは、山側ルート。
何故ならば、こうした情報が出てくると、
「これから」の場所に、人が集まるからだ。
目的地に、いかに早い手段で行こうとするか。
海側の方がまだ時間の猶予があるため、我先にと行くだろう。
だから、雪雲が海側に到達する前に…
と、考える。
結果昨日の、俺の有様になるわけだ。
昨日情報を得て考えていた人も、今もそう考えるはずだ。
一方、俺はタイヤチェーンを付けているため高速走行は出来ないが、
外せるポイントが必ずある。
なので、そのポイントを見逃さないことが重要だ。
そうすれば、高速走行は可能ですな。
PCのマップには載っていないものがあるのが、現実ってもんよ。
信じたものは、
ゼン〇ンの地図よ
俺の相棒にナビを積んでないとかじゃない、とかいう理由じゃないからー
デジタルだって、解ってる(つもり)
ということで、昨夜に考慮した
【B:山側ルートを選択した場合】
出発を午前〇〇とすれば、ある地点で雪雲の最中にいる状態となる。
だが、予報からすると、その直後に雪雲は海側へと移動していく。
しかし、それまではチェーンを履いているため高速走行は出来ない。
Aを選択した場合、チェーンをこの宿から外して走ることができる。
そして、雪雲が差し掛かる前にその危険地帯から走り抜けることも可能、かもしれない。
Bを選択した場合、途中雪が降ることが分かっているため、チェーンを履いたままの長時間走行が考えられる。
「…」
少し早めに出発して、Aルート。
これが、我が家に早くたどり着くためにと思うかもしれない。
が、
俺の調べている、この情報。
みんなも調べているものだ!
みんな、知っているのだ!
その為、同じようなことを考えるわけだ。
結果、Aを選択すると、この情報を得ている人々が集中し、どこかで渋滞が起こり、
本日と変わらない状況が起こる可能性が高い。
一方、Bルートは山道だ。
雪雲がないからと言って、それで走れることにはならないのだ!
だが、昨日の状況よりははるかにマシであろう。
雪雲とすれ違うように進むわけだから、少し変化を加えているのだ。
↑
そうさ。これで、思考のループに陥っていたD.C.も、このルートでFine.になるわけさ。 というわけで、【とある旅物語・その23】の回想でした。
これでどうよ! これ以上、問答は無用なようだ。
「…」
モーニングの最後に残しておいた、ウインナーを喰おうとする。
これを喰ったら、もうすぐに出発だ…
ということで、すぐに喰らう。
さっさと部屋に戻り、準備しておいた荷物を手にした俺は、早めのチェックアウトに向かう。
料金は、非常にリーズナブルだった。
相棒のキーを受け取り、例のお兄チャンの居るパーキングへと向かう。
「出発ですね」
お兄チャンが言う。
俺は頷いた。
ターミナルパーキングから、相棒が降りて来た。
「…」
ちょっと待てよ。
何となく、相棒が美しくなっている(=汚れが少ない)ではないか。
なんだこれは。
パーキング中に洗車までするのかい?キミのところは。
これは、間違いなく洗車をしたものだ。
入った時と、相棒は別人(別車)になってるんだよ。
汚れたものが、俺が何もしていないのに、
こんな風にピカピカに変貌するわけがない!
お兄チャンに訊いた。
「すみません、暇だったもんで拭いておきましたー」
だと。
…
拭いておいただあ?
人のクルマを、勝手に弄るだと?
俺の相棒を?
…
なんて良い人物なんだ!
例えれば、
仕事がしやすいようにそれとなくデスクを片付けておいてくれるとか、
仕事がしやすいようにさりげなく必要なものを用意してくれてるとか、
人のことを常に考えている人物だ。
このお兄チャンは、一流たる資質を十分に秘めていると感じた。
「ありがとう」
お兄チャンにお礼を言う。
相棒に乗り込み、エンジンをかける。
相棒:「ウォォォォン!」
良し。問題はないようだ。
先ずは、どこか近隣でガソリンの補充だな…
お兄チャンに、近隣のスタンドの場所を聴訊く。
「世話になった、ありがとう」
と、最後にお兄チャンの名前を伺った。
「Tです」
お兄チャンが答える。
ありがとう、Tさん。君は、間違いなく一流だ。
「じゃあ。この辺りに来る機会があれば、また」
俺と相棒は宿を後にした。
そして…
(続く)