【とある旅物語・28】

(今回はフォントが違っております。私のミスです、ハィ。最初にお断りしておきます。
内容は変わりありませんので、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます)

・前回までのあらすじ
休暇をもらって北の地に旅に出た俺。
そこでは色々あって、色々と何かしながら、今は帰路に着いていた。
高速道路で『蒼鉛の雲』に突入した俺と相棒。

そして…

相棒と俺は、高速道路をひた走る。

タイヤチェーン装備をした相棒、
そして、(自称)国際SSS級ドライビングライセンスを持つ俺。

この要素と、事前に天候について準備していた我々にとってはですね、
こんな吹雪の中でも走破出来る状態が整っていた。

時間にして一時間程度走行すれば、この雪雲の中から脱出できるはずだ。

走行車線を時速60㌔で走行していたが、次第に準備不足のクルマで走行車線が詰まってくる。
追い越し車線でも、スピードを出すことが出来ないために、左側に皆寄ってくるためだ。
渋滞の初めが始まっているのだ!

こうなってくると、

先が詰まってるんだからお前も先に進めないじゃん

と、どこかから突っ込みが来るのは分かっている。

だが、

我々はこの天候によるチェーン規制が出る前からチェーンを履いているという、
通常ははまったく気にしない要件をあらかじめ満たしているのだ!

その為、
追い越し車線を時速60㌔でセーフティードライブしていても、

何だコイツ、トロトロ走りやがって(どこかの凄腕ドライバーの声)

などと思わせてしまうような、人様の迷惑になる走行にはなっていないのだ!

普段はあまり追い越し車線には入らないが、
今は普段ではない。
相棒と共に、追い越し車線での走行を続ける。

暫くすると、吹雪で視界状態が一気に悪くなった。
ホワイトアウトってやつだ。

「…」


ところで、
クルマの免許を取る際には、大体みんな教習所に行きますよね?

そして、
「かもしれない運転」
と、
「だろう運転」
の違いを、絶対といって良いほど学科教習の時に習うはずだ。

これは、例えば見通しの悪い交差点とか、
停車している車の影とか、
要するに視界が悪いところで

「そこから人が飛び出すかもしれない、だから徐行しよう」
と考えて走行するか、

「きっとそこから人なんか飛び出さないだろう、だから行ってまえー」
と考えて走行するか、の違いを習うものだ。

そして、学科教習の映像では、必ず「だろう運転」をしている場合は人身事故を起こすという、
非常に分かりやすいものとなっている。
そのため、「かもしれない運転」をしましょう、となっている訳だ。

だが、これはあまり正しくはない、と、俺は思っている。
日本語含め、言語の解釈っていうのは、自動車の教習所で習うわけではない。

人間の考え方、認知の仕方っていうのは、それ以外の学習やこれまで生きてきた経験、環境などによるものもある。
なので、教習所がそこまで個別に指導することなど不可能なのだ。

マンツーマン、ではないのだ。
家庭教師の先生ではないのだ!

例えば、「かもしれない運転」。
人によってはですね、

「人が飛び出さないかもしれない、だから行ってまえー」

という風に考える場合もある。
逆に、

「人が飛び出すだろう、だから徐行しよう」

と、考える場合もあるのだ。

なので、この「かもしれない運転」と「だろう運転」

その言わんとしている事は、逆の様で同じことなのさ。
動詞、形容詞、助詞、肯定形、否定形、二重否定形
前に付くもの次第で、捉え方なんて千差万別よ

という真理に気付き、時と場合によって、正しくその使い分けを判断出来る者が、

本当の意味でのセーフティードライバーである

と、俺は思っている。
、かなり大げさにカッコつけて言いました、ハ

吹雪とは違うが、濃霧の中でも視界は悪くなる。
その中で、ヘッドライトを点けたとしても視界の改善には至らない。
光が、乱反射するので余計に見えなくなるのだ。
その為、フォグランプ、という、黄色く光るライトがクルマには搭載されている。
原理としては、通常のライトよりも黄色く点灯するライトの方が、水分による光の乱反射を
起こしにくい、というものに基づくからだ。

だが、これをしたとてですね、

視えにくいものは視えにくい

それに変わりはない。

だから、こうした状況下では、考え方を変える必要がある。

言ってみれば、かもしれない運転だろうが、だろう運転だろうが、
フォグランプを点けようが、

自分が安全に走れれば良い

という、「主観」に頼っていることが、最も危険な状態だ。

自分が気を付けていたとしても、自分と同じように他人が気を付けている訳ではない。
どんなに自分が気を付けていようが、遭うものには遭う。

よって、こうした場合は

「自分の存在を無理矢理にでも他者に伝える」

という手段を講じることこそが、最善策なのだ。

(あくまで、ワタクシの主観的な考えによるものですので注)

存在感を強烈にアピールすることにより、視界が悪かろうが何だろうが、否が応でも他人は気付くのだ。
そこに、危険な物体がある…と、いうことに。

「…」

俺は、相棒に搭載してある秘密アイテムの一つを使うことにした。

それはですね、

「回転灯」

です。

某国民的アニメの、秘密道具を取り出すときの言い方をお借りすれば、

かい

てん

とーう!

パカパカペケーン!(←効果音なので想像にお任せします)

相棒のフロントにそれを載せる。
シガーソケットにプラグを差し込む。
それは、瞬く間に派手な色を回転し始めた。

「…」

あまりにも派手過ぎて、少しだけビビる俺。

この回転灯は、一昔前に某有名雑貨店の何とかハンズで購入したものだ。
交通違反にはならないものではある。
初代相棒に積んでいたものを、今の二代目相棒に持ってきたパーツの一部だが、

こんなに派手でしたっけ?このぐるぐる回る光。

少し間違えたら、何か違った意味で通報されそうだ…

すかさず一旦取り外そうと思った時、

「存在感が大事なんだろこの馬鹿野郎」

と、相棒が俺に言う。


そうだな。

この、視界が悪い、という皆が平等の中では、
己の存在感を示すことが大事なのだ。

そうすることにより、大事を未然に防ぐことが出来るのだ。

相棒の助言により、俺は羞恥心を破棄して先に進む。
このホワイトアウト下でも、これだけ派手な光は目立つはずだ。
きっと、後続車もこの光を頼りに進むはずだろう。

社会貢献しているんだー

…と、自分自身を奮い立たせる。

こうした恥ずかしい感情と正義感で揺れ動きながら走る事幾何、
段々と吹雪が弱まってきた。

あの先に見えるものは…

あれは、日差し

だ。

相棒の時計に目をやると、
時刻は午後12時50分になっていた。

そうか。
雪雲の出口に来たか。
それなりに距離も走っている。

昨日から考えていた脱出ルート通りだ。

そそくさと回転灯を収め、視界が確保されていく中を走行する。

ラジヲを付けていることも気づかず、ただ日差しの見える方向へと進んだ。

そして、雪が止む。





何度も本当にそうなのかどうかを確認する。フロントガラスにぶち当たるものはない。
身体に感じるのは、青天だ。太陽の光だ!

おっしぁぁぁぁぁ

どうやら、雪雲貫通作戦は成功したようだ。相棒と俺はその辺のサービスエリアで一息入れて、
この先の帰路に着いての戦略を練ることとした。

そして…

(続く)

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