【前回までのあらすじ】
・休暇をもらった俺は旅に出た。行は良かったが、帰りは雪まみれで様々な苦難が訪れる。
現地にて訪れる苦難を打破しながら、帰路へと着く。
帰路に当たり念入りに下調べをしたつもりが、「高速道路に雪がなく晴天」という、最初から
予想が外れているという事態に焦りながらも、ブランチを摂り仕切り直す。
そして…
高速に載った。
この時点でも、天候は変わりなく晴天だ。
周囲のクルマはカッ飛ばして進んでいくが、チェーンを履いている俺は、
カッ飛ばすことが出来ない。
まあしかし、良いのだ…今は。
予定では、あと数分以内に猛吹雪圏内となる。
そうなった時に、それを突破できるかどうかが重要なのだ!
今までの情報を総合すれば、午前11時間40分前後に吹雪と対峙することになっている。
相棒の時計に目をやる。
11:35(相棒の時計の色)
だった。
今はもう、構えておいた方が良い時間だ。
しかしですね、
すごく晴れているんですよ。なんでか知らんけど。
雪とか、走行車線にないし。
なんで?
やっぱり、準備とか念入りにすると取り越し苦労になる、っていうのが通説なのかい?
こういうとき、
何だよ畜生、せっかく準備したのにいぃぃぃ
とか、思うよね。ね、絶対(←ね、を強調しております、無理矢理同意を求めてるのです)。
更に、
そうでなくて、そのような心構えが大切なのだよ
とか、誰かに諭すように言われたら、どう思いますかい?
5(こ)
6(ro)
す(酢)、
という、あまり宜しくない感情が湧くのではないでしょうか?
「…」
こんな感情が俺にも芽生えかけていたが、俺の考えが正しかったことが分かりそうな事象が起こる。
フロントガラスから先、これから向かう所に見えるあれは…
蒼鉛の雲
だ。
…
幼い頃、おばあちゃんに訊いた事がある。
雲の色が違うのはなぜなのか、ということを。
おばあちゃんと近所のスーパーマーケットに買い物に行くと、
ポッポ焼きという食べ物が売っていて、おばあちゃんはいつも俺にポッポ焼きを食べさせてくれた。
そういう中、色々な話を俺に聞かせてくれたのだ。
そして、どんな事でもおばあちゃんは知っていた。
こうした、雲のことも、天候のことも。
この雲というのは、幼い俺の住んでいる地域では見る事の出来ない雲の色だった。
その為、おばあちゃんの家に行ったときにしか見ることは出来なかったのだ。
雪国生まれだが雪国ではないところで育った俺に、
おばあちゃんは教えてくれた。
「ぱっちょ、あれは、’そうえんのくも’、っていうんだよ」
と。
雪を持ってくる雲だと、そう教えられた。
…間違いない。これから雪が降る。
そして、吹雪になる。
おばあちゃんは、いつも優しく教えてくれたんだ…
俺は、自分の信じるものに従った。
間もなくして、フロントガラスに雪が舞い散ってくる。
それはみるみるうちに猛吹雪となり、即座に視界を奪っていった。
そして、チェーン規制の警告が高速の電光掲示板やら放送やらで出るようになるが、
そんな頃にはもうダメ状態よ
と、いうことが分かっていた。
そこかしこで、ノロノロ運転が始まり、
サービスエリアの空き状況を示す掲示板は混雑を示していた。
「…」
昨日まで、ダメなのにやってみる自分を好きになったり嫌いになったりしていたが、
今回は、ダメじゃあなかったぞ!!
…と、地道に時速60㌔にて走行を続ける。
相棒の計器類に目をやる。
「…」
異常はない。
相棒の機嫌も良いようだ。
このまま行けば、安全運転を守りながらこの状況を打破できるはずだ。
昨夜宿で調べた、雪雲の動きを思い出す。
雲はここから、海側へと向かう。
雲の速さは、
えーと、
何キロだったっけ?
時速何キロとか、確認しなかったっけ?
…
俺は、肝心な部分を忘却していた。
だが、そんなことはどうでも良い。
とにかく、向かってくる雲に対して、相棒と俺は時速60㌔で突入したのだ。
もう、突貫しているのだ!
なので、時間ではないが、距離にて50キロ程度走破出来れば、解決するのだ。
非常に雑な計算ですけれどね(‘ω’)ノ
時間にすれば、1時間弱の走行よ。
その時間の中で、相棒と俺に問題が起こらなければ良いだけの事よ。
この結論により、突然天候が変わった高速を走る。
そして…
(続く)
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