ぱっちょです。
突然ですが、
人生というのはいつ、どこで、
何があるのか分かりません。
「備えあれば憂いなし」
という慣用句がありますが、
全ての出来事にあらかじめ備えておくことなど可能なのでしょうか。
思いもよらない出来事というのは、突然やってくるから思いもよらない出来事なのでしょう。
…という、哲学ぶった話は横に置いておきまして、
今回は
「バーニング」な旅物語です。
燃えてる旅だったんでしょ
なにカッコつけて横文字にしてるんだよ
どこかのルゥさんかよオマエ
とか、そう思ったそこのアナタ。
その通りです。
しかし、バーニングの始まりとは、何だったのか。
実際、バーニングになってしまうとどうなるのか。
それを知る事がここでは重要ミッションなのです。
今回は、このバーニングについてのとある旅について語っていきたいと思います。
例によって、シャレにならない部分にはフィクションを織り込まぜており、
楽しく読めるようにとしておりますので、ご了承ください。
では行こう!
【とあるバーニング旅物語・ここから始まります】
それは遡る事過去のいつか、俺が社会人となってから数か月後の出来事であった。
学生気分も徐々に薄まり、緊張感を持ちながら生活していくという意味が分かってきていた頃。
その日も緊張感を持ち、普段と変わらぬ日々を送っていた。
当時の職場は変則勤務制で、
・早番(朝早く~)
・日勤(大体8時くらい~)
・遅番(正午前~)
・夜勤(夕方~)
というものだった。
それまで、社会人の勤めというのは
「8時-17時」が基本じゃないの?
それで時間が足りなかったら、リ●インとか飲めば24時間戦えるんでしょ?
それが普通であると、少し社会を舐め始めていた。
最初はこの変則勤務体制に身体がなかなかついていけずにキツかったものの、慣れとは恐ろしいものだ。
その環境に、順応していくのだ。
学生時代から一人暮らしはしていたものの、
社会人としての一人暮らしはそれまでのものとは違う。
この頃の俺は社会人としてはまだまだヒヨッコで、ちょっとしたことで色々ヒヨっていた。
あらゆる社会の荒波に揉まれている最中。
そんな時に、事件は起こった。
その当日。
俺は遅番で、がむしゃらに業務をこなし、仕事上がりまであと残り2時間程度となった時であった。
もう夜だというのに、部署内の内線を通じて、俺宛に電話が入った。
外線とは珍しい。
最初にその電話を受けたのは、同じ遅番の同僚だった。
彼は電話を受けながら俺の方に振り向き、
「お、お、お」
なに?
おならでも出るの?
マジでおならする5秒前?
「お前んち燃えてるってよ!!」
彼は言った。
ソイツの震える手。
おぼつかない口調。
泳ぎまくりの目玉。
何を言われているのか分からなかったが、取り敢えず電話を変わる。
で、
「キミんち燃えてるで!!」
開口一番、電話口からそう叫んだのは、その日非番の同僚だった。
その同僚の家は、駅からの帰り道に俺のアパートがある前の道を通るのだが、
丁度その時、豪々と燃え盛る我が家と、そして何台かの消防車が集結している現場に遭遇したとのこと。
最初、俺のウチに電話をかけたらしいが、出なかったために職場に急いでかけてくれたと。
安否を気遣ってくれた同僚の優しさを感じましたとさ。
消火活動のハンパなさを公衆電話から実況してくれて、その慌てた声の様子から相当な事が分かる。
なぜ公衆電話からかというと、この頃まだ携帯電話というものは普及していませんでしたからねぇ。
同じ遅番勤務であった職場内の同僚たちはあたふたと落ち着きなく挙動不審になっていた。
オタオタするのは俺の方なんじゃないかい?
っていうか、オタオタしたい。
ボクらの役割分担をきちんとしないといけないですな。
俺は、電話を掛けてきてくれた同僚にひとまずお礼を言い、受話器を置く。
燃えてるんだってさ、ウチ
バーニングしてるんだって
現在進行形みたいだよ、今
遅番の同僚たちは、早く帰った方がいいよ、と勧めてくれたが、
本当だったら、もうどうしようもないんじゃないのかい?
燃えてるんだから。
早く帰っても、早く火が消えるわけではないでしょう。
ワンチャンですね、現場中継で電話をくれた同僚の言う事が冗談だったとしよう。
だが、そんな質の悪い冗談を言うようなヤツでないのは、俺も皆もよく知っている。
電話からはもの凄い騒がしい周囲の音も聞こえたし、
よって、燃えているのは間違いないでしょう。
仕事上がりまではもうすぐだった為、俺はそそくさと業務を片付け始める。
数分後、電話を掛けてきてくれた同僚が息を切らせて職場に駆けつけてくれた。
我が家の燃え盛るすさまじさを、超具体的に話してくれたのだ。
消防による消火活動の様、そして沢山の野次馬。てんやわんや。
この、実際に火災現場を目撃してしまった同僚の超具体的な話を聞くまでは、
「自分たちのそれぞれの想像」
を各々がしており、多少なりとも現実との乖離があった。
その為、心のどこかに
0.00000000001㌫
くらい、どこか間違っているのではないかという気持ちが存在していたのだ。
俺も含めて。
だが、その発する一言一言は、正に現場を目撃してしまった者だけが伝える事が出来る重みがあった。
これ、マジでヤバいヤツですわ。
燃えるその現場が、燃えていないこの現場にいる皆を凍り付かせた。
同僚たちは再び、「もう直ぐに帰ったほうがいいよ」と、心配してくれる。
しかしですね、
目撃者のリアルな状況を聞けば、早く帰ろうが意味はないわけですな。
そうなっちゃってるって解ってるのだから、いつ帰ったって同じ事よ。
なんなら、帰るといっても、本当にそこは帰っても良い場所なのかい?
形あるものはいつかはなくなるんですよ。
森羅万象。
諸行無常。
色即是空。
この世の理ってやつよ。
既に、俺はテンパっていた。
何を考えれば良いのかすら考えられない。
そして、
そうならもう職場に住んでしまえ!
とか、テンパった果てにそんなことを思い始める。
同僚からはなぜそんな平然としていられるのかを聞かれたが、
決してそんなことはないぞ。
そう見えてるだけなんだよ。
何でかっていうと、
「落ち着けない、俺!」という焦りと、
「落ち着くんだ、俺!」という冷静さを保とうとする何かが脳内を駆け巡りまくって、
自分の情緒がどうなっているのかが最早分からなくなっており、
要は、「フリーズ状態」になっていただけの事ですから、どうぞご心配なく。
そして、この日は同僚の心配を余所に、定時まで勤めを果たし業務を終了。
帰路に着く。
自宅近隣まで来ると、何か焼け焦げた匂いが漂ってきた。
そして、自宅前に到着。
「…」
我が家は、出勤時とは全く違う様相になっていた。
真っ黒こげになった何かが、俺の住んでいた場所にあった。
だが、良く見ると真っ黒こげになっていない部分もあった。
全焼という訳でもなさそうだが、酷いありさまだ。
建物の明かりは全て消えており、また夜であったため日中と同じ場所だとは思えなかったが、
多分、これがワタクシのウチだ。
朝はいつもと変わってなかったよ。
ワタクシのウチだったはずだ。
そして、
夜となった今はいつもと変わってるよ。
本当にワタクシのウチなのかい?
とりあえず、
もうBurningではなく、Burnedの状態であることは分かる。
英文字にしたとて、またそれが分かったとて、何がどうなるわけでもない。
暗い。
人気がなく妙に静かだ。
焦げた匂いしかしない。
そして、アパートの入り口に、
「keepout」の黄色いテープ
が貼り巡らされていた。
こんなの、映画でしか見たことないよ。
何か事件があったときのやつだよね。
現実にあったんだね、これ。
この先に入ったらダメ、ってやつでしょ。
だけど、おかしいでしょこれ?
ここは、ボクのウチなんだよ?
なぜ入っちゃいけないのかね?
誰がこんなイタズラをしたんだい?
嫌だなあ、やめてくださいよ、こんなイタズラ。
仮にイタズラではなくとも、
keepoutの中に入ったらダメって、誰が決めた?
変えなければならない規則だってあるのだよ。
レボリューションだよ。
人類は、そうして進化を求め、より良いものを導き出すために闘い抜いてきたのだよ!
そういうことで、このkeepoutをバリバリと剥がしてあげました。
ここで注意ですが、
絶対にこんな真似をしてはいけません
後で大変なことになります。
こうして、建物内へと突入。
通路は、そこら辺が煤けており、更に放水された後でビチョヌレだった。
自室の前まで行く。
薄暗い中、真っ黒になったドア。
焦げてるが、ドアと分かる形状だ。
手探りで鍵穴を確かめながら、鍵を差し込んだ。
カチャリ
と鍵が開く。
どうやら鍵穴は無事だったようだ。
カギを回し、ドアを開けようとするが、
開かなかった。
「…」
もしかしたら、今日仕事に行く前に鍵をかけ忘れていて、
開けっ放しで出ちゃったのかも知れないな。
もう一度カギを回してみるが、開かない。
やっぱり、かけ忘れてないよ。
今ので閉まった感覚があるぞ。
ウチのカギは、二回転半ほど回して、そこから更にある部分の45度の角度まで持っていくと開くようになっているんだ。
でちゅノートを持っていた、ラィTo君から教わった完璧な防犯対策なんだ。
↑
もちろん、こんなことはウソです。
「…」
何故開かないのだろう。
しばらく考えてみた。
そして、ある仮説が生まれる。
なるほど、これは、
ドアのパッキンが溶けて、固まっているわけですな!
だから開かないんじゃない?
力任せにドアノブを引っぱる。
バリバリバリバリバリメッキョオオオオ
と、もの凄い音をたててドアは開いた。
室内は真っ暗だ。
玄関のスイッチを入れるが、当然明かりは点かない。
靴を脱ぎ、室内に入る。
一歩目を踏み出した時に、
びちょ
という音を立てて、「靴の中に水が入って何か嫌になる」感覚が俺を襲った。
床が水びだしになっていた。
しばし時間が経ち、目が暗闇に慣れてくる。
部屋の奥へと進むが、そこら辺は全てビショビショなのは間違いないだろう。
室内の全てが確認できたわけではないが、建物が燃えたとしても、中身の全てが燃えているわけではないようだ。
燃えているその時には、それだけでかなりのインパクトがあるため、
それだけで何もかも全滅していると思いがちのようだが、
火消しの為にされた「放水」!
これの破壊力も相当なものだ!
換気扇や通気口、ありとあらゆる穴という穴、隙間という隙間から水が入って来ていて、
多少の燃えているダメージはあるものの、
放水によるダメージもまた馬鹿に出来ない!
だが、命には変えられない。
他の部屋の方々は、無事であろうか。
ここまで最小限に被害を収めてくれた消防隊員の方、地域の方に感謝することが大切だ。
そして、俺の生活はこの先、どうなることやら…
明日は早番だ。
俺は、今夜は寝ないことにして明るくなってから室内を確認することにした。
そして…
(続く)